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NS-1000Mのメンテナンス前編でネットワークのコンデンサ交換とスピーカー端子の交換を行いました。
後編ではアッテネーターのメンテナンスを行います。

~作業~
スピーカーからアッテネーターを取り外し、ケースを外します。
アッテネーターへの配線材に1986と記載されていましたので、このNS-1000Mは86年頃の生産のようです。

固定用の銅板を外して、紙を取り除きます。
(一行で書いていますが、この作業が一番面倒な気がします)

ナットとワッシャー、接続端子固定用のネジを外せば、内側へアクセスできます。
中はグリスと黒ずんだ被膜でかなり汚れています。




後ろ側のEリングと接続端子固定用のネジを外して分解しました。
巻線と接続端子部がグリスですごいことになっています。

接続端子を外して巻線からクリーニングしていきます。

1.無水エタノールでグリスを取り除き、乾いた綿棒で拭きます。
2.接点洗浄剤を綿棒に付けて軽く塗布し、液体が残らないように拭きます。
3.最後に接点グリスを薄く塗ります。
テスターでクリーニング前後の直流抵抗を計ったところ7.5Ωから7Ωへと改善された(電流が流れやすくなった)ので、洗浄の効果はあるでしょう。

接続端子も同じようにクリーニングして、グリスと黒ずんだ被膜を取り除きます。


きれいになりました。
こちらも直流抵抗が0.2Ωから0.1Ωへと改善されました。

最後に稼働接点部と軸を洗浄します。
接点が焼けて茶色くなっています。

きれいになったので、軸と軸受にグリスを塗布して巻線部と組みます。

注:写真を撮り忘れたので、この後の画像は別個体のものとなります。
そのため、洗浄前の画像から出します。

洗浄後:

前側の巻線部と組み合わせます。

ここでNS-1000Mのアッテネータークリーニングについての注意事項を。
よくアッテネーターのクリーニングで接点洗浄剤を隙間から吹き込むという方法が出てきますが、NS-1000Mでは全く無意味です。
このアッテネーターは巻線部分を稼働接点が移動することで抵抗値を可変する仕組みです。

(中央U型の接点が巻線部を移動します)

その仕組み上、隙間から洗浄剤を吹き込むだけでは、接点部の洗浄は行えません。
無意味なだけでなく洗浄剤が巻線部のグリスを流してしまい、接点が摩耗する原因となる可能性があります。
更に洗浄剤が稼働接点の裏側に残り、使っていると接点焼けの原因となって、状況を悪化させてしまうでしょう。
NS-1000Mのアッテネータークリーニングは分解して洗浄作業を行わないと効果がありません。

最後に紙を戻し、銅板をハンダで固定してアッテネーターのクリーニングが出来上がります。

後はケースを取り付けてスピーカーへと戻し、配線をハンダで繋いで終了です。

これでメンテナンス完了です。
劣化したコンデンサの交換と汚れたアッテネーターの接点をクリーニングしたことで、クリアな音が戻ってきました。
交換したコンデンサの慣らしとハンダ付け作業による熱ダメージの回復のため、100時間程度は慣らしが必要ですので、しばらく鳴らしこむことにします。

最後に今回の作業の代金を記載しておきます。
NS-1000Mメンテナンス作業代金(左右ペア・部品代含む)
ネットワークコンデンサ交換:20,000円
スピーカー端子交換:8,000円
アッテネータークリーニング:12,000円
合計40,000円

コンデンサ交換は今回のメンテナンスで使用した部品代で算出しています。
無極性電解コンデンサ47μFをフィルムコンデンサで置き換える場合や部品のグレードを上げると値段は上がります。

担当S

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